KAORU MATSUMOTO Photographer

「男性保育士は女の子のオムツ替えをするな」の声に男性保育士が思うこと

2017年に千葉市立保育園での男性保育士のオムツ替えについて、市長が表明した方針に賛否両論の声があがりました。
今回は一人の男性保育士として、思うところを書いてみようと思います。

千葉市の男性保育士オムツ替え問題とは?

経緯を簡単に説明します。
千葉市の保育園では、これまでに一部の女児の保護者から「うちの娘のオムツ替えや着替えは男性保育士にはさせないでほしい」という要求がありました。
園では保護者の要求を受け入れ、男性保育士が特定の女児への保育業務(オムツ替え、着替え、プールなど)から外されることがあったそうです。
これに異を唱えたのが千葉市長で、次のような考えを示しました。

  • 男性保育士のみを特定の保育業務から外すのは、性別による差別にあたる
  • 今後千葉市では、男性保育士も女性保育士と全く同じ形で保育業務にあたるようにしていく

市長が表明したこの方針について、女の子をもつ保護者を中心に賛否両論が巻き起こっているという状態です。

男性保育士が性犯罪の疑いの目を向けられるのは仕方ない?

保護者がまだよく知らない男性保育士に対して、「うちの娘にわいせつをするかも・・・」という疑いを捨てきれないのは、無理もないと思います。
男性教員による子どもへのわいせつ事件が毎日のように報道されるような社会なのだから。

学校に通っている年齢の子どもなら被害を保護者に訴えることができるかもしれないけど、保育園には言葉で物事を伝えるのがまだ難しい年齢の子もいます。
男性保育士によるわいせつ事件が起きたときに、本人が被害にあっていることに気づけなかったり、何となく不快感を抱いたとしても言葉で保護者に訴えることが難しいことも多いでしょう。

子どもを性犯罪から守ることだけでなく、子どもの気持ちも一緒に考えてほしい

もし僕が、あるお母さんから「あなただけは、うちの娘のオムツ替えをしないでください」と言われたら?
たぶん…ですけど、それで全体の保育が成り立つのなら園長の指示に大人しく従う気がします。

ただ、そんなお母さんには一つだけ一緒に考えてほしいことがあるんです。

あなたの娘さんが男性保育士に「他の先生じゃイヤだ!あなたに私の着替えをやってほしい!」と訴えたら、僕たちはその子にどんな言葉を返したらいいのでしょうか?

一人一人の子どもには、好きな先生がいます。
身の回りの手伝いを「あの先生にやってもらいたい」という気持ちを身振りや言葉で表し、思い通りにいかないと泣いて訴える光景は、保育園では日常茶飯事です。

これまでに僕が関わってきた女の子の中にも、「着替えやオムツ替えを松元先生にやってほしい」という子がいました。
その子たちの顔を思い浮かべると、手伝いをやってあげられない理由をうまく言葉にする自信がないんです。

監視カメラは抑制にはなる…が、男性保育士による女児への保育を公正にジャッジできる?

監視カメラを設置して、保護者がスマホのアプリでいつでも保育の様子を見ることができれば、男性保育士による性犯罪の抑制にはなるでしょう。

でも監視カメラを見た保護者は、保育士の一つ一つの行動が「保育として必要な行為」なのか、それとも「個人的な欲求を満たすための行為」なのかを本当に公正にジャッジできるのでしょうか?

うんちで汚れた女の子のお尻をきれいに拭く男性保育士。
一人で寝つけない女の子の身体をさする男性保育士。
おむつ一枚の姿で「この服はイヤ!」と訴える女の子を抱き上げる男性保育士。
このような男性保育士の姿を、個人的な感情を抜いた客観的な目で見つめる自信がありますか?

監視カメラの設置自体には、僕は賛成です。
「明日から園内のいたるところにカメラを設置して、常に監視します」と言われても、僕は困りません。
ただ、その映像を元にした「保育or性犯罪」のジャッジは、保護者ではなく保育の専門家に担ってほしいと思います。

時間をかけて子どもに好かれることによって保護者から信頼してもらえることも

ここからは、保育の道に進もうとしている男性に読んでほしいお話です。

昔僕が働いていた保育園で、「男性保育士にはちょっと冷たい」という噂の保護者がいるクラスを担任したことがありました。
確かに、その保護者が僕と話しているときはあまり表情がなく、こちらにいい印象を抱いていない気はしました。

クラスが始まってから半年ほど経ったある日、その保護者から廊下ですれ違うときに「先生」と呼び止められたんです。
ちょっとドキッとしたんですけど、話を聞いてみると「うちの子が、最近よく先生の話をするんです。先生のことが好きみたいです」って、はじめて笑顔を見せてくれたんですね。
保育士が保護者と信頼関係を築くためには、あせらずに時間をかけて、まずは子どもとの関係を作ることが大事なんだなって気づかされる出来事でした。

女性社会で働く男性保育士が身を守るために必要なこと

女性社会で圧倒的少数の男性が生きていくために必要なポイントって、色々あると思います。

考えてみると、女性社会の中で一人の男性保育士を性犯罪者に仕立て上げるのって、そう難しいことではないんです。
園の女性保育士たちが声をそろえて「あの男性保育士は、女の子のお尻を拭くときにやたらと時間をかける」と指摘すれば、それが嘘でも本当でも、男性保育士が孤軍奮闘で潔白を証明するのは難しいですよね。

なので保育園で働く男性保育士は、よりいっそう周りの同僚たちから信頼してもらえるような関係を作る意識がけっこう大事なんじゃないかと思います。
そのためには、嘘をつかない、ごまかさない、ミスはきちんと認める、困っている人に手を貸すといった、シンプルで小さなことを毎日ちょっとずつ積み重ねていくのが一番です。
普段の仕事の中で同僚との関係ができていれば、もし保護者との間に問題が起こっても同僚だけは味方になってくれますから。

※このブログに登場する人物・出来事は全て架空のものです。
私が保育士として遭遇した出来事を元に、
登場人物の名前・性別・年齢・言動などを変え、
個人の特定につながらないようにした上でご紹介しています。

「手のかからない子」はいつも後まわし
子どもの名前が、周りの人からたくさん呼ばれますように
知らない人は「危ない人」?
「保育園ではちゃんとやるのに、どうして家ではできないの?」と考えるお母さんへ
子どもに「あとでね」と言ったことがある人へ
絵本を読む男の子とお母さんを見つめるお父さん
「せんせい、これ読んで」に隠れた子どもの気持ち