KAORU MATSUMOTO Photographer

「せんせい、これ読んで」に隠れた子どもの気持ち

「これ読んで」と絵本を手に、大人の膝の上にちょこんと座る子ども。
なのに、いざお話が始まると全然聞いていない。

一応最後まで読み進めて本を閉じると、子どもは「もう一回!」という。

そんなときに、「えー、今全然見てなかったじゃん!」って、子どもに突っ込んだことはありませんか?
僕も保育中に何度かやったことがあります。

今思うと、こちらの労力に対する見返りを子どもに求めていたんです。
「あなたのために長いお話を読んであげるんだから、ちゃんと聞いてよ」って。

子どもの「これ読んで」という訴えには、どんな気持ちが含まれているのでしょうか。

そこにあるのは、必ずしも「絵本を楽しみたい」という動機だけではないと思うんです。

「お母さんや先生の膝の上に座りたい、肌に触れたい」
そんな気持ちが「これ読んで」の言葉になることもある。

大好きな人の膝の上に座り、頭上からやわらかい声が降ってくる。
あの場所は、きっと居心地がいい場所なんでしょうね。

赤ちゃんの頃には当たり前だった抱っこという行為は、子どもが大きくなるにつれて段々と減っていきます。
子どもなりにプライドが芽生えて、赤ちゃん扱いされることを恥ずかしいと思うようになる。
保育園では4、5歳にもなると、本当は抱っこしてほしくても「せんせい、抱っこして」とは中々言えません。

「抱っこして」とは言えないけど、「これ読んで」なら言える。

先生に抱っこしてもらったら「赤ちゃんみたい。」って周りのみんなに笑われる。
でも、先生の膝の上で絵本を読んでもらうときには、きっと誰も笑わないから。

 

このブログの中には、私が保育士として遭遇した子どもの姿に触れている記事があります。記事の公開にあたり、個人の特定につながらないよう必要に応じて人物の情報や状況を類似のものに置き換えています。