KAORU MATSUMOTO Photographer

「保育園ではちゃんとやるのに、どうして家ではできないの?」と考えるお母さんへ

保育園で生活する子どもの様子を、保護者に実際に見てもらう。
それが保育参観です。
子どもが遊んでいる姿だけでなく、食事や着替えなどの生活の様子も含めて知ってもらう場です。

我が子の様子を見たお母さんの感想として多いのが、こんな言葉です。

「うちの子、保育園ではこんなにちゃんとやってるんですね。家では全然やらないのに・・・」

自分でスプーンを握り、食事を口に運ぶ。
散歩中、友だちと手をつないで文句を言わずに歩く。
家では見慣れないそんな姿を目にすると、お母さんたちは驚くようです。

そしてお母さんは、保育士にこう尋ねます。
「どうしたら家でも保育園みたいにきちんと自分のことをやるようになりますか?」

それに対して具体的な方法をお伝えすることもあるのですが、それとは別に一つ知っておいてほしいことがあるんです。
家ではやらない。保育園ではやる。
そんな子どもの姿は、ある意味で自然で健全な状態なのだということ。

保育園では、子どもは少なからず気を張っています。
「先生好き、お友だち好き、保育園楽しい!」という子も、集団生活のあちこちで小さな気遣い(我慢)をしているんです。
すべり台をやりたいと思ったら、列に並んで順番を待たなければならない。
大好きなカレーをたくさんおかわりしたくても、他の友だちと分け合わなければならない。
そんな風に毎日の生活の中で小さな我慢を繰り返し経験していく中で、子どもたちは自律を覚えて社会性を身につけていくのだと思います。

今これを読んでいるあなたは、自宅でも外の社会でも同じ姿ですか?
僕の場合、たぶん全くの別人です。
保育園では正座だけど、家ではあぐら。
保育室の掃除はピカピカにしますが、家はあまり片付いていません。

それが人の自然な姿だと思うんです。
子どもも僕たち大人と同じです。
保育園という小さな社会に出て、自分のことをきちんとやろうと、人に迷惑をかけまいと頑張っている。
家庭という安心の場に帰ると、大好きなお母さん・お父さんに見守られて肩の力がスッと抜ける。
それでいいと思うんです。

「うちの子、家じゃ全然やらないんですよー。先生、この子になんとか言ってやってくださいよー」と語るお母さんの隣でバツの悪そうにしている子どもの顔を見ていると、
「安心して肩の力を抜いて過ごせる場所があって、きみは幸せだなぁ・・・」なんて思います。

一方で、家ではきちんとしているのに保育園では逆の姿を見せる子がたまにいます。
こういう子のことがとても心配になります。
本来一番肩の力を抜いていいはずの家庭で頑張ってしまっているきみは、一体どこで息を抜くんだろうって。

このブログの中には、私が保育士として遭遇した子どもの姿に触れている記事があります。記事の公開にあたり、個人の特定につながらないよう必要に応じて人物の情報や状況を類似のものに置き換えています。