KAORU MATSUMOTO Photographer

子どもには、優しさの前にワガママを知ってほしい

年齢の近い子どもたちが一緒に遊んでいると、相手の使っているものを自分も欲しくなることがあります。
子どもは「それ、貸ーしーてー」と相手の子のおもちゃに手を伸ばす。
保育園では日常茶飯事のそんな光景は、お母さんが子連れでママ友と会うときにもきっと見られますよね。

もし他人の子どもが我が子に「それ貸して」と言ったら。
相手の頼みを我が子が受け入れられなかったら、あなたはご自分のお子さんにどんな声をかけますか?

「いいよ、でしょ?」とおもちゃを相手の子に貸してあげるよう促す。
その結果、お子さんが自分のおもちゃを相手に譲ってあげられれば、一件落着です。

…本当にそうでしょうか?

この子は、嫌なときには「イヤ!」と他人に向かって自分の気持ちを口にできる子なのでしょうか。
もしできないのなら、「いいよ」を求めるのは、この子が「イヤ!」の気持ちを存分に言葉にできるようになってからの話です。

大人が子どもに最初に教えるべきなのは、「嫌なことはイヤって言っていいんだよ」ということだと思うんです。
友達の気持ちを考える優しさよりも、お母さんを怒らせることへの恐れよりも、この子に一番最初に知ってほしいのは、自分の気持ちにぴったりの言葉を見つけ、口にすることです。

もちろん他人の顔色を気にしながら渋々口にする言葉も、社会を生きていくためには必要なものです。
でも社会性を身につけるのは、自己表現の後でいい。

子どもの心の真ん中に一番近い言葉を必死に考えて、気持ちと言葉とをつなげてあげる。
「あなたは今、きっとこんな気持ちなんだろうね。それにはこの言葉がぴったりだよ」って、子どもに言葉を差し出してあげる。
僕も子どもにとってそんな大人でいられたらいいな、と思います。

このブログの中には、私が保育士として遭遇した子どもの姿に触れている記事があります。記事の公開にあたり、個人の特定につながらないよう必要に応じて人物の情報や状況を類似のものに置き換えています。