ウェディングフォトグラファーの松元馨(まつもとかおる)です。
余興で盛り上がる披露宴も楽しいけれど、昔と比べると最近は「みんなとゆったり話せる時間をとりたい」という新郎新婦の考えから、歓談の時間をたっぷりとった披露宴が増えている気がします。
歓談多めの披露宴を予定している新婦さんがよく口にするのが、「ゲストにとって退屈な時間にならないか」という不安です。
そこで今回は、歓談メインの披露宴をお二人だけでなく、ゲストにもご家族にも楽しんでもらうためのポイントをまとめてお伝えします。
CONTENTS
ゲストにとって近寄りやすい高砂とは?
披露宴の歓談中は、ゲストは自由に立ち歩いて大丈夫な時間です。
それでもゲストからすると、「今高砂に行って大丈夫かな?他のグループが動き始めるまで待とうかな」と高砂に向かうにはちょっとした勇気がいるようです。
特にホテルの大宴会場の高砂は、ゲスト席よりも高さがあり、豪華なお花で彩られています。
高砂は豪華になればなるほど、ゲストにとっては足を踏み入れるときの心理的なハードルがより高くなります。
なので、もしゲストに高砂に気軽に来てもらいたいのなら、ゲスト席と同じ高さのシンプルな高砂をお勧めします。
上の写真では、右手にある円卓が高砂です。
お花が飾られている他は、その高さも大きさもゲスト席とほとんど変わりません。
ゲストにとっては、壁を感じることのない立ち寄りやすい高砂といえます。
実際にこの披露宴では、ゲストが自席と高砂とを気軽に行き来して新郎新婦との歓談を楽しんでいました。
(この披露宴の様子は、↓のギャラリーページでご覧いただけます)
もしあなたの式場がもっとカジュアルな雰囲気なら、よりゲストが立ち寄りやすい高砂にすることもできます。
上の写真のようにテーブルクロスを使わず、お花を正面ではなくテーブルの左右に配置すれば、より身近なイメージになります。
更にゲストとの距離を縮めるために、高砂自体をなくした人もいます。
上の写真の披露宴では、高砂の代わりに、各ゲストテーブルに新郎新婦の席を用意して、一緒にお食事をしながら歓談を楽しんでいました。
(この披露宴の様子は、↓の記事で詳しくご覧いただけます)
全てのゲストグループとバランスよく歓談するには?
歓談メインの披露宴をゲストが退屈に感じる一番の原因は、全てのゲストグループが公平に新郎新婦と歓談できるような配慮がされていないことです。
新郎新婦がAグループとばかり喋っていたら、Bグループのゲストは「なんだか退屈な時間だな…」と感じるのも無理はありません。
そこでここからは、新郎新婦が全てのグループのゲストとバランスよく歓談するためのポイントについてお話します。
高砂での歓談の盲点
歓談の時間になると、ゲストが次々と高砂にやってきてくれます。
この高砂での歓談では、各グループとバランスよく話す時間をとるのが意外と難しいです。
その理由は次の通り。
- ゲストのグループによって、高砂の滞在時間が異なる
(次のグループに気を遣って早めに切り上げるゲストもいれば、あまり気にせずに高砂で長々と歓談するゲストもいる) - 高砂から遠く離れた席にいるご親族が行き来しづらい
「みんなとたくさん話したい!」と思って高砂での歓談の時間だけを長めにとっても、終わってみたら一部のグループとばかり話してしまったということがあり得るんです。
これらの不安要素を解消するためには、高砂での歓談とは別に「ラウンド」形式の歓談にも時間のゆとりをもたせておくのがポイントです。
ラウンド形式の歓談なら、全グループと均等に話せる
ラウンドとは、新郎新婦がゲストテーブルに出向き、ご挨拶をして回るプログラムです。
その代表格がフォトラウンドと呼ばれる、各ゲストテーブルでの記念撮影。
「フォトラウンド=記念撮影のためだけの時間」と考えている人が多いのですが、実は全テーブルのゲストと歓談ができる貴重な時間でもあります。
この「ラウンド中の歓談」が「高砂での歓談」と大きく異なるのは、式場のスタッフが各ゲストテーブルでの歓談時間を客観的な目で区切ってくれるところ。
お二人が全てのテーブルのゲストと均等に歓談できるように、スタッフが頃合いを見て次のテーブルへの移動を促してくれます。
ラウンドで動くのは新郎新婦なので、ゲストは次に待っている他のグループに気をつかわずに、心置きなく歓談の時間を楽しむことができます。
高砂から離れた席にいるご家族・ご親族も、ラウンドの時間には他のゲストと同じようにお二人との歓談を楽しむことができます。
これらのメリットを踏まえて、高砂での歓談だけでなく、フォトラウンドの時間にもゆとりをもたせておくことをお勧めします。
中には「フォトラウンドに時間をかけると、待っているゲストを退屈させるのでは?」という声もありますが、心配しなくて大丈夫。
全てのテーブルのゲストが同じようにゆったりとお二人との歓談を楽しめれば、ちょっとした待ち時間のことなんてそう気にはなりません。
(フォトラウンドについては、↓の記事で詳しく解説しています)
歓談以外のプログラムはどの程度必要?
これまでに私が撮影してきた歓談メインの披露宴では、プログラムを入れるとしても「乾杯」「ケーキカット」「ゲストのスピーチ」「プロフィールムービー」「テーブルインタビュー」「ご両親への手紙・記念品贈呈」くらいという人が多いです。
みんなと言葉を交わす時間を大切にしたいのなら、間延びを心配してあれこれプログラムを詰め込む必要はありません。
テーブルインタビューは、スピーチよりも会場全体で楽しみやすい
テーブルインタビューとは、各テーブルのゲストに司会者がインタビューをし、新郎新婦との思い出を聞かせてもらうというもの。
一人のゲストが最初から最後までお祝いの言葉を述べるスピーチと比べると、ゲストの負担はだいぶ軽くなります。
テーブルインタビューは司会とゲストとのキャッチボール形式になるので、会場全体で楽しむ空気になりやすいです。
ゲスト同士の距離を近づける工夫
披露宴の余興には、場を盛り上げるだけでなく、会場内のゲスト同士の距離を近づける効果もあります。
例えばダンスの余興をすれば会場が一体となって手を打ってくれますし、観ている方も「新郎新婦にはこんな友達がいるんだ」と知ることができます。
余興のない披露宴でゲスト同士を無理に接触させる必要はありませんが、さりげなくお互いを知るためのひと工夫をしてあげることで、ゲストにより楽しんでもらえた例もあります。
新郎新婦によるゲスト紹介
少人数のアットホームな披露宴でお勧めなのが、新郎新婦によるゲスト紹介。一人一人のご親族やゲストを、新郎新婦がマイクで紹介するプログラムです。
お話するのは、その人柄・思い出など何でも構いません。
新郎新婦の口から紹介されるだけで親近感が増すのか、その後のちょっとした空き時間に異なるグループのゲスト同士の交流が生まれることもあります。
席次表に紹介コメント
ゲストの人数が多いと、新郎新婦がゲスト全員を紹介する時間はとてもとれません。
それでもお互いを少しでも知ってほしいということで、席次表の中に各ゲストの紹介コメントを加えた人もいました。
例えば、「見た目は怖いが実は優しい父」のような微笑ましいものから、「クールな松岡修造」「美味しいラーメン屋はこの男に聞け!」のように、会ってみたい、話してみたいと思わせるような紹介まで、その内容は様々。
人数分のコメントを考えるのは大変ですが、ゲストが席次表を眺める時間にちょっとした楽しみを加えることができます。
歓談メインの披露宴は、写真的につまらなくなる?
当日が近づくにつれて、「絵になる場面が少なく、つまらない写真になるのでは?」と不安になる人もいるようです。
余興のない披露宴の写真を赤の他人が見たら、確かにつまらないと感じるかもしれません。
絵になる派手な余興の方が、SNS映えはするでしょう。
でも、ゲストとの触れ合いの時間を大事にしようとしている花嫁さんの多くは、そんな写真を求めているのではない気がするんです。
あなたと言葉を交わして笑っている友達の表情。
遠くから来てくれたおじいちゃんの笑顔。
他人にはその価値がわからなくても、ご本人にとってはきっと「意味のある写真」になると思いますよ。
歓談多めの披露宴でのカメラマン選び
最後に、歓談多めの披露宴を魅力的な写真に残してくれるカメラマンの選び方についてお話しします。
カメラマンの本当のスキルを事前に知るために
まず大前提として、カメラマンのWebサイトやSNSにどんなにたくさん素敵な写真が並んでいても、絶対にネット上で依頼を決めないこと。
ネット上に掲載されている写真はカメラマンがセレクトしたベストショット集なので、本来の実力以上の印象を与えることが多いからです。
依頼を決める前にカメラマンに会いに行って、「過去に撮った歓談メインの披露宴写真」をたっぷりと見せてもらいましょう。
そのときはカメラマンが選んだベストショット集ではなく、「一組の新郎新婦に納品された全データ」を見せてもらうこと。
例えば、カメラマンがある新郎新婦に400カットの写真を納品していたのなら、その400カットの写真全てを見せてもらうのです。
この全データの確認には、次のメリットがあります。
- 美化されていないありのままのカメラマンのスキルを把握できる
- メインプログラムの合間に、カメラマンがどんな光景に目をとめているかがわかる
- 新郎新婦だけでなく、ご家族やゲストをどれくらい撮っているかがわかる
写真を見るときには、新郎新婦やゲストが「カメラを意識せずにどれだけ自然な表情でいるか」もチェックしておきましょう。
余興で盛り上がっている会場ではカメラマンの動きが目立たなくても、穏やかな歓談の場では「撮られてる…」という意識が強まることがあります。
「なるべく意識させずに新郎新婦とゲストの自然な表情を撮る力」は、歓談メインの披露宴におけるカメラマン選びの大切なポイントです。
写真内のクレジットが目立たないカメラマンを選ぼう
もし私がカメラマンを探すとしたら、自分の写真の中に「大きく名前(クレジット)を入れている人」は選びません。
無断転載を防ぐためにクレジットを入れるにしても、さりげない大きさにとどめている人がいい。
例として、クレジット有無の2枚の写真を見比べてみましょう。
まずはクレジットなしの写真。
披露宴後に、新郎のお母さんと手をとりあう新婦さんの写真です。
こちらは大きなクレジット有りの写真。
写真の中の光景よりも、撮影者の名前の方が強く主張してきます。
クレジットの目立つ写真からは「写真の中の光景を尊く思う気持ち」が感じられず、「これは俺が撮ったんだぞ」という自己アピールが先立っている印象を受けてしまうんです。
私が好きなウェディングフォトグラファーに、Kevin Mullins(ケヴィン・ムリンズ)という人がいます。
この人は、「できるだけ会場のゲストに溶け込み、撮られていることを意識させずに自然な表情を残すこと」を大切にしているカメラマンです。
ケヴィン氏のサイトを見てみると、彼の写真にもクレジットは入っています。
でも、その大きさは「よく見たら名前があった」という程度のもの。
このさりげなさは、写真の中の自分の存在をなるべく目立たせたくないという思いの表れでしょう。
撮り手のことよりも「写真の中のふとした瞬間の光景、そこに映っている人の感情」に思いを馳せてほしい。
あなたがそんなカメラマンに出会えることを願っています。