Blog

持ち込みカメラマンの選び方【結婚式の写真で失敗しないために】

ウェディングフォトグラファーの松元馨(まつもとかおる)です。

式場カメラマンではなく外部カメラマンを持ち込む場合には、新郎新婦自らカメラマンを手配することになります。

外部カメラマンの中には、プロだけでなくアマチュア〜セミプロも混在しているため、スキルもサービス内容も様々です。そのためWebサイトやSNSの情報だけを信じて依頼を決めると、思わぬ失敗をすることがあります。

そこで今回は、カメラマンへの依頼を決める前に必ず確認しておくべきポイントをまとめてご紹介します。

気になるカメラマンを見つけたら、6つの確認を

ネットで候補となるカメラマンを見つけたら、まずは次の6つの確認をしておきましょう。
後の失敗のリスクを大幅に減らすことができます。

  1. 撮影当日に2台以上のカメラを用意しているか
  2. 2つのメディア(SDカードなど)に同時記録ができるカメラを使っているか
  3. 1日1組限定の撮影か
  4. 担当カメラマン本人との打ち合わせはあるか
  5. 過去の持ち込みカメラマンとしての撮影件数
  6. 「一組の新郎新婦に納品された全データ」を見せてもらえるか

それぞれの項目について詳しく見ていきましょう。

家族と記念撮影をしながら大笑いする新郎新婦

撮影当日に2台以上のカメラを用意しているか

アマチュア〜セミプロのカメラマンに多いのが、1台の高級機で撮影を行なっているケース。
もし結婚式の途中でカメラが壊れたら、撮影を続けることができません

プロにとっては大前提のことですが、必ず複数台のカメラを用意しているかを確認してください。

2つのメディア(SDカードなど)に同時記録ができるカメラを使っているか

プロ用の上級機は、2枚のSDカードをカメラに入れて同時記録ができるようになっています。
片方のカードが壊れても、もう一枚のカードに同じデータが残っているので、データが完全に消えるリスクを大幅に減らすことができるのです。

セミプロのカメラマンの中には一枚のカードにしか記録できない中級機以下のカメラを使っている場合もあります。
念のために「使用機材が複数のカードに同時記録できるものか」を確認しておきましょう。

1日1組限定の撮影か

1日に2組以上の結婚式撮影を受けているカメラマンだと、何らかのアクシデントで1件目の終わりと2件目の始まりの時間が重なった場合に一部の撮影を省略されてしまうことがあります。
最初から最後まできっちり撮影してもらうためには、1日1組限定の約束があると安心です。

担当カメラマン本人との打ち合わせはあるか

リクエストを伝えるだけでなく、あなたの結婚式への思いをくみとってもらうためにも、カメラマン本人との打ち合わせがあるか確認しておきましょう。

間に人をはさまずにカメラマン本人と打ち合わせをすることで安心して当日を迎えることができますし、心的な距離が縮まるので、当日にカメラの前でリラックスして笑えるようになります。

過去の持ち込みカメラマンとしての撮影件数

式場によっては、持ち込みカメラマンに非協力的だったり、撮影に必要な情報を共有してくれない場合もあります。
そのような状況の中でも、撮影に必要な交渉をしたり、初見の空間で撮影ポジションを臨機応変に判断するといった独特のスキルが持ち込みカメラマンには求められます。

これまでに持ち込みの立場でどの程度の撮影経験があるかを確認しておきましょう。最低50件程度の撮影経験があればOKです。

「一組の新郎新婦に納品された全データ」を見せてもらえるか

挙式の新婦入場の一連の写真

カメラマンのWebサイトやSNSで公開されているのは、大量の撮影データの中から選び出されたベストショット集です。
いいとこ取りの写真だけでは、本来の実力がどの程度なのかがわかりません

事前にカメラマンの本当の実力を知るために、「過去の撮影データの中で、一組の新郎新婦に納品された全てのデータ」を見せてもらってください。
例えば、カメラマンがある新郎新婦に400枚の写真を納品していたら、その400枚全てを見せてもらうのです。

全データをネット上に公開してもらうのは難しいので、カメラマンに直接会いに行って見せてもらいましょう。

依頼を決める前に、必ずカメラマンとの顔合わせを

ここまでお話してきた6つの確認がとれたら、顔合わせのお願いをしましょう。
カメラマンとの顔合わせの目的は、次の2つです。

  • 人柄・相性を確認する
  • たくさんの写真を見せてもらうことで、カメラマンの本当の実力を知る

くれぐれも顔合わせをせずに依頼を決めてしまわないように
ネット上で依頼を決めるというのは、「見学をせずに式場を決める」「試着をせずにドレスを決める」のと同じくらいにリスクが高いことだと考えてください。

人柄・相性を確認しよう

サイトに掲載されている写真がどんなに素敵でも、あなたがカメラマンの人柄を好きになれなければ、結婚式当日にカメラの前でやわらかく笑うことはできません
担当カメラマン本人と実際に顔を合わせて話す中で、相性を確認しましょう。

クリスマスのウェスティンホテル東京の階段でポーズ写真を撮る新郎新婦

ネットで公開されていない写真を見せてもらおう

お顔合わせの場で、そのカメラマンが過去に撮った写真を見せてもらいましょう。
繰り返しになりますが、見せてもらうのはカメラマンがセレクトしたベストショット集では意味がありません。
必ず「一組の新郎新婦に実際に納品された全ての写真」を見せてもらいましょう。

全データを見せてもらうことによって、そのカメラマンが「一つ一つの場面で色んな表情(微笑みと大笑いなど)を撮っているか」や「新郎新婦だけでなくご家族やゲストをどのくらい撮っているか」がわかります。

見せてもらう写真は、できるだけあなたの結婚式に近い雰囲気のものをリクエストしてください。
決まっている範囲でかまわないので、次の条件を伝えればカメラマンもデータを選びやすいです。

  • 会場の環境(広さ、外の光が入るかなど)
  • ゲストの人数や年齢層
  • 挙式の形式(キリスト教式 or 神前式)
  • 披露宴のプログラム
  • 写真で見てみたい演出

もしあなたの式場が持ち込みカメラマンの撮影を厳しく制限する場合は、必ず同じ制限の中で撮影した写真を見せてもらうこと。
例えばあなたの式場に「持ち込みカメラマンは挙式中はゲスト席から動かずに撮影」という厳しいルールがあるのなら、カメラマンに「これまでにゲスト席から撮った挙式写真を見せてください」とお願いしましょう。
チャペル内を自由に動きながら素敵な写真を撮るカメラマンが、ゲスト席での固定撮影でも同じくらいに魅力的な写真を残せるとは限らないからです。

(チャペル挙式のゲスト席での撮影については、↓の記事で詳しく解説しています)

結婚式の不安や演出のアイデアなどの相談に乗ってもらおう

結婚式についての不安や悩みなどを、式場関係者ではない第三者目線の外部カメラマンに相談できるのも、顔合わせのメリットです。
「フォトラウンドの時間が長いとゲストは退屈する?」「限られた時間でみんなが楽しめるゲームってない?」のように、抱えている不安があったら気軽に相談してみましょう。
カメラマンは結婚式当日に新郎新婦と終始一緒にいる数少ないスタッフなので、現場目線のアドバイスをもらえるはずです。

複数のカメラマンに会いに行って、異なる意見に触れよう

カメラマンとのお顔合わせの場ですぐに依頼を決めようとしないで、できるだけ複数のカメラマンに会いに行くことをお勧めします。
時間はかかりますが、カメラマンによって写真も人柄も価値観も大きく異なることがわかりますし、式場への交渉方法など役に立つ情報のストックを増やせます。

もし同じような条件のカメラマンで迷ったら、最終的には人柄で決めてOKです。
当日に会うのが楽しみになるようなカメラマンを選べば、きっとカメラの前にリラックスして立てるはずですよ。

余興なし歓談メインの披露宴をみんなに楽しんでもらうために

ウェディングフォトグラファーの松元馨(まつもとかおる)です。

余興で盛り上がる披露宴も楽しいけれど、昔と比べると最近は「みんなとゆったり話せる時間をとりたい」という新郎新婦の考えから、歓談の時間をたっぷりとった披露宴が増えている気がします。

歓談多めの披露宴を予定している新婦さんがよく口にするのが、「ゲストにとって退屈な時間にならないか」という不安です。

そこで今回は、歓談メインの披露宴をお二人だけでなく、ゲストにもご家族にも楽しんでもらうためのポイントをまとめてお伝えします。

ゲストにとって近寄りやすい高砂とは?

披露宴の歓談中は、ゲストは自由に立ち歩いて大丈夫な時間です。
それでもゲストからすると、「今高砂に行って大丈夫かな?他のグループが動き始めるまで待とうかな」と高砂に向かうにはちょっとした勇気がいるようです。

特にホテルの大宴会場の高砂は、ゲスト席よりも高さがあり、豪華なお花で彩られています。
高砂は豪華になればなるほど、ゲストにとっては足を踏み入れるときの心理的なハードルがより高くなります

なので、もしゲストに高砂に気軽に来てもらいたいのなら、ゲスト席と同じ高さのシンプルな高砂をお勧めします。

ウェスティンホテル東京の披露宴会場ビクターズ

上の写真では、右手にある円卓が高砂です。
お花が飾られている他は、その高さも大きさもゲスト席とほとんど変わりません。
ゲストにとっては、壁を感じることのない立ち寄りやすい高砂といえます。

新郎とグラスを合わせるゲストたち

実際にこの披露宴では、ゲストが自席と高砂とを気軽に行き来して新郎新婦との歓談を楽しんでいました。
(この披露宴の様子は、↓のギャラリーページでご覧いただけます)

もしあなたの式場がもっとカジュアルな雰囲気なら、よりゲストが立ち寄りやすい高砂にすることもできます。

高砂の緑

上の写真のようにテーブルクロスを使わず、お花を正面ではなくテーブルの左右に配置すれば、より身近なイメージになります。

更にゲストとの距離を縮めるために、高砂自体をなくした人もいます。

ご親族テーブルで歓談する新郎新婦

上の写真の披露宴では、高砂の代わりに、各ゲストテーブルに新郎新婦の席を用意して、一緒にお食事をしながら歓談を楽しんでいました。

(この披露宴の様子は、↓の記事で詳しくご覧いただけます)

全てのゲストグループとバランスよく歓談するには?

歓談メインの披露宴をゲストが退屈に感じる一番の原因は、全てのゲストグループが公平に新郎新婦と歓談できるような配慮がされていないことです。
新郎新婦がAグループとばかり喋っていたら、Bグループのゲストは「なんだか退屈な時間だな…」と感じるのも無理はありません。

そこでここからは、新郎新婦が全てのグループのゲストとバランスよく歓談するためのポイントについてお話します。

高砂での歓談の盲点

歓談の時間になると、ゲストが次々と高砂にやってきてくれます。
この高砂での歓談では、各グループとバランスよく話す時間をとるのが意外と難しいです。
その理由は次の通り。

  • ゲストのグループによって、高砂の滞在時間が異なる
    (次のグループに気を遣って早めに切り上げるゲストもいれば、あまり気にせずに高砂で長々と歓談するゲストもいる)
  • 高砂から遠く離れた席にいるご親族が行き来しづらい

「みんなとたくさん話したい!」と思って高砂での歓談の時間だけを長めにとっても、終わってみたら一部のグループとばかり話してしまったということがあり得るんです

これらの不安要素を解消するためには、高砂での歓談とは別に「ラウンド」形式の歓談にも時間のゆとりをもたせておくのがポイントです。

ラウンド形式の歓談なら、全グループと均等に話せる

フォトラウンド中に男性ゲストと談笑する新郎新婦

ラウンドとは、新郎新婦がゲストテーブルに出向き、ご挨拶をして回るプログラムです。
その代表格がフォトラウンドと呼ばれる、各ゲストテーブルでの記念撮影。
「フォトラウンド=記念撮影のためだけの時間」と考えている人が多いのですが、実は全テーブルのゲストと歓談ができる貴重な時間でもあります。

この「ラウンド中の歓談」が「高砂での歓談」と大きく異なるのは、式場のスタッフが各ゲストテーブルでの歓談時間を客観的な目で区切ってくれるところ。
お二人が全てのテーブルのゲストと均等に歓談できるように、スタッフが頃合いを見て次のテーブルへの移動を促してくれます。

ラウンドで動くのは新郎新婦なので、ゲストは次に待っている他のグループに気をつかわずに、心置きなく歓談の時間を楽しむことができます。

家族と記念撮影をしながら大笑いする新郎新婦

高砂から離れた席にいるご家族・ご親族も、ラウンドの時間には他のゲストと同じようにお二人との歓談を楽しむことができます。

これらのメリットを踏まえて、高砂での歓談だけでなく、フォトラウンドの時間にもゆとりをもたせておくことをお勧めします。

中には「フォトラウンドに時間をかけると、待っているゲストを退屈させるのでは?」という声もありますが、心配しなくて大丈夫。
全てのテーブルのゲストが同じようにゆったりとお二人との歓談を楽しめれば、ちょっとした待ち時間のことなんてそう気にはなりません。

(フォトラウンドについては、↓の記事で詳しく解説しています)

歓談以外のプログラムはどの程度必要?

これまでに私が撮影してきた歓談メインの披露宴では、プログラムを入れるとしても「乾杯」「ケーキカット」「ゲストのスピーチ」「プロフィールムービー」「テーブルインタビュー」「ご両親への手紙・記念品贈呈」くらいという人が多いです。
みんなと言葉を交わす時間を大切にしたいのなら、間延びを心配してあれこれプログラムを詰め込む必要はありません

テーブルインタビューは、スピーチよりも会場全体で楽しみやすい

テーブルインタビューとは、各テーブルのゲストに司会者がインタビューをし、新郎新婦との思い出を聞かせてもらうというもの。
一人のゲストが最初から最後までお祝いの言葉を述べるスピーチと比べると、ゲストの負担はだいぶ軽くなります。

新婦を笑顔で見つめながら思い出を語る女性ゲスト

テーブルインタビューは司会とゲストとのキャッチボール形式になるので、会場全体で楽しむ空気になりやすいです。

ゲスト同士の距離を近づける工夫

拍手を受けるダンサー

披露宴の余興には、場を盛り上げるだけでなく、会場内のゲスト同士の距離を近づける効果もあります。
例えばダンスの余興をすれば会場が一体となって手を打ってくれますし、観ている方も「新郎新婦にはこんな友達がいるんだ」と知ることができます。

余興のない披露宴でゲスト同士を無理に接触させる必要はありませんが、さりげなくお互いを知るためのひと工夫をしてあげることで、ゲストにより楽しんでもらえた例もあります。

新郎新婦によるゲスト紹介

少人数のアットホームな披露宴でお勧めなのが、新郎新婦によるゲスト紹介。一人一人のご親族やゲストを、新郎新婦がマイクで紹介するプログラムです。
お話するのは、その人柄・思い出など何でも構いません。
新郎新婦の口から紹介されるだけで親近感が増すのか、その後のちょっとした空き時間に異なるグループのゲスト同士の交流が生まれることもあります。

席次表に紹介コメント

ゲストの人数が多いと、新郎新婦がゲスト全員を紹介する時間はとてもとれません。
それでもお互いを少しでも知ってほしいということで、席次表の中に各ゲストの紹介コメントを加えた人もいました。
例えば、「見た目は怖いが実は優しい父」のような微笑ましいものから、「クールな松岡修造」「美味しいラーメン屋はこの男に聞け!」のように、会ってみたい、話してみたいと思わせるような紹介まで、その内容は様々。
人数分のコメントを考えるのは大変ですが、ゲストが席次表を眺める時間にちょっとした楽しみを加えることができます

歓談メインの披露宴は、写真的につまらなくなる?

家族と歓談して大笑いする新郎新婦

当日が近づくにつれて、「絵になる場面が少なく、つまらない写真になるのでは?」と不安になる人もいるようです。

余興のない披露宴の写真を赤の他人が見たら、確かにつまらないと感じるかもしれません。
絵になる派手な余興の方が、SNS映えはするでしょう。

でも、ゲストとの触れ合いの時間を大事にしようとしている花嫁さんの多くは、そんな写真を求めているのではない気がするんです。

あなたと言葉を交わして笑っている友達の表情。
遠くから来てくれたおじいちゃんの笑顔。

他人にはその価値がわからなくても、ご本人にとってはきっと「意味のある写真」になると思いますよ。

歓談多めの披露宴でのカメラマン選び

最後に、歓談多めの披露宴を魅力的な写真に残してくれるカメラマンの選び方についてお話しします。

カメラマンの本当のスキルを事前に知るために

まず大前提として、カメラマンのWebサイトやSNSにどんなにたくさん素敵な写真が並んでいても、絶対にネット上で依頼を決めないこと。
ネット上に掲載されている写真はカメラマンがセレクトしたベストショット集なので、本来の実力以上の印象を与えることが多いからです。

依頼を決める前にカメラマンに会いに行って、「過去に撮った歓談メインの披露宴写真」をたっぷりと見せてもらいましょう。
そのときはカメラマンが選んだベストショット集ではなく、「一組の新郎新婦に納品された全データ」を見せてもらうこと。
例えば、カメラマンがある新郎新婦に400カットの写真を納品していたのなら、その400カットの写真全てを見せてもらうのです。
この全データの確認には、次のメリットがあります。

  • 美化されていないありのままのカメラマンのスキルを把握できる
  • メインプログラムの合間に、カメラマンがどんな光景に目をとめているかがわかる
  • 新郎新婦だけでなく、ご家族やゲストをどれくらい撮っているかがわかる

写真を見るときには、新郎新婦やゲストが「カメラを意識せずにどれだけ自然な表情でいるか」もチェックしておきましょう。
余興で盛り上がっている会場ではカメラマンの動きが目立たなくても、穏やかな歓談の場では「撮られてる…」という意識が強まることがあります。
「なるべく意識させずに新郎新婦とゲストの自然な表情を撮る力」は、歓談メインの披露宴におけるカメラマン選びの大切なポイントです。

写真内のクレジットが目立たないカメラマンを選ぼう

もし私がカメラマンを探すとしたら、自分の写真の中に「大きく名前(クレジット)を入れている人」は選びません
無断転載を防ぐためにクレジットを入れるにしても、さりげない大きさにとどめている人がいい。

例として、クレジット有無の2枚の写真を見比べてみましょう。

ヒルトン東京でお母さんと手を取り合う新婦

まずはクレジットなしの写真。
披露宴後に、新郎のお母さんと手をとりあう新婦さんの写真です。

お母さんと手を取り合う新婦 クレジット入り

こちらは大きなクレジット有りの写真。
写真の中の光景よりも、撮影者の名前の方が強く主張してきます。

クレジットの目立つ写真からは「写真の中の光景を尊く思う気持ち」が感じられず、「これは俺が撮ったんだぞ」という自己アピールが先立っている印象を受けてしまうんです。

私が好きなウェディングフォトグラファーに、Kevin Mullins(ケヴィン・ムリンズ)という人がいます。
この人は、「できるだけ会場のゲストに溶け込み、撮られていることを意識させずに自然な表情を残すこと」を大切にしているカメラマンです。

ケヴィン氏のサイトを見てみると、彼の写真にもクレジットは入っています。
でも、その大きさは「よく見たら名前があった」という程度のもの。
このさりげなさは、写真の中の自分の存在をなるべく目立たせたくないという思いの表れでしょう。

撮り手のことよりも「写真の中のふとした瞬間の光景、そこに映っている人の感情」に思いを馳せてほしい
あなたがそんなカメラマンに出会えることを願っています。

100カットじゃ足りない?カット数別に写真を見比べてみよう【撮影プランの選び方】

ウェディングフォトグラファーの松元馨(まつもとかおる)です。

多くの式場では、撮影プランは「100カットで10万円」「400カットで20万円」のように、カット数ごとに分かれています。

400カットと言われて、その写真の量をうまくイメージできますか?
100カットで十分なのか、足りないのかがよくわからない」という人の方が、きっと多いですよね。

そこで今回は、過去に私が撮った結婚式の写真を「100カットプラン」と「400カットプラン」にあてはめるとどうなるのか、見比べてみましょう。

プラン選びに迷っている人は、一つのイメージとして役立ててください。

実際の私の撮影ではカット数によるプラン分けはしておらず、お渡しする写真は800〜1000カットになることが多いです。今回の内容はあくまでも、ウェディング業界で一般的なカット数をイメージしてもらうために、私の写真をセレクトしたものです。

100カットの写真と400カットの写真を見比べてみよう

それではさっそく、結婚式の写真を「100カット」と「400カット」にセレクトしたものを見比べてみましょう。
といっても実際に400カット全ての写真を見るのは大変なので、ここでは場面ごとに「それぞれのカット数だとどんな写真を撮ってもらえるか」を見ていきます。

披露宴入場シーン(100カットの場合)

100カットプランの場合、入場シーンの写真は下の「披露宴会場を歩く新郎新婦」の1枚のみとなります。

披露宴会場に入場する新郎新婦

披露宴入場シーン(400カットの場合)

今度は400カットプランの写真を見てみましょう。
100カットプランと比べてもらえる写真の量が4倍になると、同じ入場シーンでも写真のバリエーションが増えてイメージがガラッと変わります

※ 新たに増えた写真には青いフレームをつけています。

ヒルトン東京で披露宴の入場を待つ新郎新婦の後ろ姿

こちらは新たに加わった写真。
入場を待つ2人の後ろ姿。

披露宴会場の扉前で振り返る新郎新婦

カメラを振り返っての1枚も。

披露宴会場に入場する新郎新婦の後ろ姿

こちらは扉のオープン直後に後ろから撮った写真。

披露宴会場に入場する新郎新婦

こちらは100カットプランと同じ、入場する新郎新婦の写真です。

このように、カット数が増えるとプログラムの真っ最中だけでなく、そこに至るまでの様子も残せることがわかりますね。

ゲストのスピーチ(100カットの場合)

次に、ゲストによるスピーチの場面を見比べてみましょう。
まずは100カットプランから。

ホテルニューオータニアーチェロでスピーチをするゲスト

まずはスピーチをするお友達の写真。

ホテルニューオータニアーチェロでスピーチに耳を傾ける新婦

次にスピーチに耳を傾ける新郎新婦の写真です。
100カットプランだと、スピーチ中の写真はこの2枚のみです。

ゲストのスピーチ(400カットの場合)

続いて400カットプランの写真を見てみましょう。

ホテルニューオータニアーチェロでスピーチをするゲスト

ホテルニューオータニアーチェロでスピーチに耳を傾ける新婦

ここまでは、100カットプランと同じですね。

友人スピーチで笑う新婦

先ほどの写真とアングルは同じですが、より楽しそうに笑った瞬間の写真も追加されました。

スピーチの内容を忘れてしまう女性ゲスト

スピーチ中にど忘れをして、「あんなに練習したのに…」とつぶやく女性ゲスト。

笑う男性ゲスト

ほのぼのとしたスピーチの空気に頬のゆるんだ男性ゲストの姿も。

このようにカット数に余裕があると、一つのプログラム中でも様々な表情を残してもらえたり、想定外のちょっとした出来事の写真も撮ってもらえます

フォトラウンド(100カットの場合)

最後にフォトラウンド(各卓写真)の場面を見てみましょう。
フォトラウンドとは、披露宴で新郎新婦がゲストテーブルを順番にまわって記念写真を撮るプログラムです。
今回は全テーブルではなく、3テーブルに絞ってご紹介します。

まずは100カットプランの写真を見てみましょう。

ウェスティンホテル東京のビクターズでのフォトラウンド

男性ゲストとの記念写真

女性ゲストとの記念写真

このように100カットプランの場合は、カメラ目線の記念写真のみになることが多いです。

フォトラウンド(400カットの場合)

次に400カットプランの写真を見てみましょう。

ウェスティンホテル東京のビクターズでのフォトラウンド

まずはカメラ目線の記念写真。
この写真は、100カットプランと同じものです。

笑顔で新婦を見上げる女性ゲスト

こちらは新たに追加された写真。
記念撮影直後に表情がゆるんだゲストの姿です。

男性ゲストとの記念写真

続いてのテーブルでの記念写真。

男性ゲストと歓談する新郎

これも新たに追加された写真。
お友達に囲まれて嬉しそうな新郎さん。

女性ゲストとの記念写真

カメラ目線の記念写真だけでなく…

記念写真の合間に大笑いする新郎新婦とゲスト

撮影中につい吹き出してしまった瞬間の写真も増えました。

このようにカット数が増えると記念撮影だけでなく、合間の様子もよくわかりますね。

カット数の少ないプランでは、楽しそうな大笑いの写真を残しにくい

先ほどのスピーチの場面でご紹介した、次の2枚の写真をもう一度見てみましょう。

ホテルニューオータニアーチェロでスピーチに耳を傾ける新婦

こちらは100カットと400カットプランの両方に含まれていた写真。

友人スピーチで笑う新婦

そしてこちらは100カットプランにはなく、400カットプランで新たに追加された写真です。

これを見て、「100カットプランには楽しそうな大笑いの写真を入れずに、軽く微笑んでる写真を選んでいるのはどうして?」と疑問に思う人もいるでしょう。

女性(新婦さん)にとって、自分が大笑いしている写真は好みがはっきり分かれます。
「楽しい時間が思い出せて嬉しい」という人だけでなく、「大笑いをしている自分の写真はちょっと恥ずかしくて人に見せたくない」という人も意外と多いんです。

微笑んでいる写真と大笑いの写真の両方を残せれば一番いいのですが、100カットという限られたカット数の中では1場面ごとに色んな表情の写真を残す余裕はありません。
「どちらか一つを選ばなければならないなら、大笑いよりも微笑みの写真の方が無難」とカメラマンは考えるわけです。

カット数を増やしたところで意味がないケースとは?

ここまでの比較で、カット数に余裕があると「プログラム前後の様子」や「様々な表情」の写真をより多く残せることがわかりました。

ただし、これはあくまでも私が撮った場合の話です。

あなたが依頼するカメラマンが「とにかく新婦の美しい姿を1枚でも多く撮ってあげたい」と考える人なら、カット数と共に増えていくのは主役の絵になる写真です。

これは、どちらが正しいという話ではありません。
大事なのは、あなたが撮ってほしいものとカメラマンが撮っているものがきちんとかみ合っているかどうか。
そこが食い違っていると、どんなにカット数を増やしても満足の写真にはなりません。

予算の都合で少ないカット数を選ぶ人は、カメラマンのセレクトの傾向をチェックしておこう

カット数が多い方がいいのはわかっていても、予算の都合で少ないカット数のプランを選ぶ人もいるかと思います。

ここまでの写真の比較で見てきたように、カット数の少ないプランでは1場面ごとに様々な表情の写真を残してもらうことは難しいです。

写真をもらってから後悔することのないように、事前にカメラマンによる写真のセレクトがあなたの好みとマッチしているかをチェックしましょう。

具体的なチェック方法ですが、「同じカメラマン」が撮った「同じプラン」の写真を事前に全て見せてもらいましょう
例えば100カットプランを検討している人は、あなたの担当カメラマンが過去に撮った1件の結婚式の100カットの写真全てを見せてもらうこと。
その上で感じた不満があれば、「もっとゲストの様子を撮ってほしい」「すました顔より、もっと楽しそうな表情を残してほしい」と要望を具体的に伝えて、自分の好みに寄せてもらいましょう。